在マカッサル領事事務所 海外安全対策情報
令和2年11月5日
2020年度第2四半期
1 一般治安情勢
治安は概ね良好であるが、いくつか注意を要する。ひったくり、窃盗、置き引き、車上荒らし等の犯罪は日常生活において発生する可能性が高い。夜間の外出は極力控え、外出する場合は歩かずに車(自家用車、タクシー)を利用する。また昼間においても道を歩く際には、バイクによるひったくりが発生する可能性があるため周囲に注意を払い、道路側にカバンを持たない等の対策を行う。
麻薬の売買が横行しており、薬物関連事件が多数発生している。インドネシアにおいては、麻薬関係法規の違反者は厳しく処罰され、場合によっては死刑あるいは禁固等の重刑が科されることもあるので、違法な薬物には絶対に手を出さない、また、事件に巻き込まれることのないように、繁華街の路地裏など麻薬取引が行われる可能性が高い場所には近づかないことが重要である。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、失職者の増加などによる治安情勢の悪化が懸念される。現在のところ特段の治安悪化は認められていないが、被害の未然防止には十分注意する必要がある。
2020年9月、ジャカルタ首都圏内において、非正規の自家製アルコール飲料(いわゆる「密造酒」「闇酒」)を摂取したことが原因とみられる在留邦人の死亡、中毒症状の発症等の事案が発生。同様のアルコール飲料はほかの地域でも流通している可能性があり、もし疑わしき飲料が手元にある場合には絶対に飲用しない。いかなる場合でも、「密造酒」や「闇酒」と呼ばれる非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は差し控えるべきである。
このほか、各主要都市において、住民によるデモが発生することがあるが、当事務所管轄地域で発生した、民衆の抗議活動が暴動に発展した近年の事案は以下のとおり。
(1)2019年8月以来数か月間、パプア州、西パプア州のほぼ全域で、人権問題に関して断続的に行われたデモが暴動に発展する事例が複数回発生し、数千名規模の地域住民が州外へ避難するなどの事態に発展した。
(2)2019年9月下旬から10月初旬まで、インドネシア国内の各主要都市で、汚職撲滅委員会に関する法(KPK法)改正及び刑法改正案などへの抗議活動が活発化し、南スラウェシ州マカッサル市、東南スラウェシ州クンダリ市でも、一部で暴動に発展する事例が発生した。
2 テロ情勢
近年、インドネシア各地においてテロ(未遂を含む)事件が複数発生しており、2018年5月には東ジャワ州で複数の宗教施設や警察署を対象とした爆弾テロ事件が発生し、一般市民を含む多数の死傷者が出ている。また、2019年11月には北スマトラ州メダン市で警察署を標的とした自爆テロ事件が発生、2020年6月には南カリマンタン州南フルスンガイ県で警察車両に放火し、警察官1名を刺殺する事件が発生した。ついては、テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関係施設、宗教関連施設、ショッピングモールや公共交通機関等の不特定多数の人が集まる場所)を訪れる際は、常に周囲の状況に注意を払い、不審な状況を察知したら速やかにその場を離れるなど身の安全を確保することが必要。新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴い、テロ組織の活動も低調化するとの見方がある一方、ISILやアルカイダ等ではこの世界的流行を「神の罰」と称し、混乱状態に付け込んで攻撃を促す呼び掛けも確認されている。また、経済活動の停滞により困窮し、政治・社会・経済に不満を募らせた市民が過激主義思想に共感し、いわゆるローンウルフ型やホームグロウン型のテロを引き起こす可能性に留意しなければならない。なお、中部スラウェシ州ポソ県を拠点とした「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」はISIL支持を表明している。
パプア州ミミカ県及びプンチャック・ジャヤ県、中部スラウェシ州ポソ県は、外務省海外安全ホームページにおいて、危険度レベル2「不要不急の渡航は止めてください。」の危険情報が発出されている地域であり、やむを得ず渡航・滞在する場合は、取得した滞在許可等に基づき、常に最新の情報収集に努め、現地事情に詳しい者を同行させるなど、特別な注意を払うとともに十分な安全対策が必要。なお、各地における近年の動向は以下のとおり。
(1)パプア州
2020年1月11日にンドゥガ県で武装グループと治安部隊の間で発生した銃撃戦により治安部隊が負傷した事件をはじめ、同地域ではインドネシアからの分離独立を標榜する武装組織と治安部隊との銃撃戦を含む衝突が度々発生しており、双方に多数の死傷者が発生しているほか、同年3月30日、ミミカ県ティミカに所在する外資系鉱山会社の事務所周辺で、分離独立派武装組織が後に犯行を示唆した襲撃事件が発生し、同社に所属する外国籍者を含めた数名の民間人が犠牲となった。また、同年7月27日、ンドゥガ県において、治安部隊の治安維持行動により多数の民間人が犠牲になっているとして地域住民が治安部隊に対して撤退を求める抗議活動を展開し、同地方政府機関高官もこれに同調するなど、治安部隊との軋轢も報告されている。このほか、令和2年度第2四半期中、同州内の治安に関する主な報道は以下のとおり。
ア 8月16日、ミミカ県において、治安部隊が、武装組織のカリ・コピ地域部隊司令官を射殺。引き続き同地域で残党の掃討にあたる。
イ 9月14日、インタン・ジャヤ県において、民間人(バイクタクシー従事者)2名が武装組織による銃撃を受けたが、治療を受け回復。また、同17日、同県において、民間人(バイクタクシー従事者)1名が武装組織に刃物で襲撃され死亡。武装組織はこれらの襲撃事件の被害者に関し、治安当局が変装し諜報活動していた人物であるとしている。
ウ 9月17日、インタン・ジャヤ県スガパ郡において、国軍基地付近で物資搬送中の治安部隊が武装組織による襲撃を受け、銃撃戦に発展。国軍兵士1名が被弾し死亡。翌18日、搬送のため遺体をのせた航空機が武装組織によるものと見られる発砲を受けたが、機体に損傷はなく出立。さらに翌19日、同基地付近で武装組織と治安部隊による銃撃戦が発生。国軍兵士1名が被弾し死亡した。
エ 9月20日、インタン・ジャヤ県において、民間人(牧師)1名が銃撃を受け死亡。治安当局は武装組織による犯行であるとし、武装組織や教会関係者は治安当局による襲撃であるとの見解を示している。同28日、中央政府はこの事件に関し、調査チームを派遣すると発表した。
オ 9月25日、インタン・ジャヤ県スガパ郡ビロガイ空港において、武装組織と治安部隊による銃撃戦が発生。この戦闘による死傷者はいないとされている。
(2)中部スラウェシ州ポソ県
2020年3月27日、救援物資を搬送していた治安部隊が「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」とされる武装グループから襲撃を受ける事案が発生した。同県では同グループによる治安部隊との銃撃戦や地元住民を殺傷する事件が引き続き報じられており、治安部隊への攻撃や困窮者のリクルートなど、コロナ禍における活発化を懸念させる動向も報告されている。このほか、令和2年度第2四半期中、同グループに関する主な報道は以下のとおり。
ア 8月8日、同県の農夫2名が拉致、一時監禁及び治安部隊の配置に関する尋問を受けた後、うち1名が殺害された。残る1名は逃走。
イ 8月14日、同県の山間で、同県に居住する退役軍人の遺体が発見された。同11日以降、被害者所有のバイクを強奪するため、武装グループにより殺害されたとされている。同事件後、国軍は部隊の増派を決定。
ウ 8月18日、治安当局は、同グループのリーダーの妻を含む、同グループの支援を行っていた2名を、7月29日に逮捕していたことを発表した。
3 災害
令和2年度第2四半期中、当事務所管轄地域で報じられた主な災害は以下のとおり。(1)地震
ア 9月8日、マルク州近海において、マグニチュード6.2の地震が発生。震源は同州中部マルク県から南東198kmの近海、震源の深さは193km。
イ ほか、当事務所管轄地域各地でマグニチュード5を超える複数の地震が観測されている。
(2)水害
ア 7月11日、東南スラウェシ州北コナウェ県において、豪雨による洪水が発生。同県内8つの地区が浸水し、浸水深0.7mから0.8mを記録した。
イ 7月13日から降り続いた大雨の影響により、南スラウェシ州北ルウ県において、複数の河川が氾濫し鉄砲水が発生。同21日時点で、死者38名、行方不明10名、負傷者106名と報告され、3,627世帯14,483名が避難生活中。民家4,202軒及びその他100軒以上の建物や交通及びライフラインなどのインフラ、農耕地約450ヘクタールが被害を受けた。北ルウ県政府は、同14日から30日間を対象期間として緊急対応ステータスを設定した。
ウ 7月15日、東南スラウェシ州コナウェ県において、大雨によりコナウェハ川が氾濫し洪水が発生。同21日時点で1,154世帯4,046人が避難生活中であり、民家1,981軒、公共施設約100軒、橋梁3か所、水田17,800ヘクタールが被害を受けた。
エ 7月16日、西パプア州ソロン市において、豪雨による洪水、地滑り、河川の氾濫が発生。同19日時点で、死者5名、負傷者4名と報告された。
オ 7月24日及び同30日、北マルク州タリアブ島県において、大雨による洪水が発生。5つの郡に渡り民家1,000軒以上、1,000名以上の住民が被害を受けた。
カ 7月24日及び同31日、北スラウェシ州南ボラアン・モンゴドウ県において、二度にわたり洪水、鉄砲水、地滑りの被害が発生。7,046世帯22,655名が被害を受けたと報告された。民家64軒が深刻な被害を受け、29軒が押し流されたほか、橋梁などにも被害が及んだ。南ボラアン・モンゴドウ県政府は、同24日から2週間を対象期間として緊急対応ステータスを設定した。
キ 8月10日、中部スラウェシ州パリギ・モウトン県ティノンボ郡において洪水が発生。293世帯が影響を受けた。記録された浸水深は0.4mから0.5m。
ク 9月7日、ゴロンタロ州ボネ・ボランゴ県において、大雨に伴い鉄砲水が発生。ブラワ郡で計114軒の民家が被害を受け、約1,500名の住民が避難した。同11日時点で、死者3名、行方不明1名と報告された。
ケ 9月16日、西パプア州ソロン市において、豪雨による洪水及び地滑りが発生。地滑りによる家屋の倒壊により、2名の死者が報告された。洪水被害は3つの郡に及び、浸水深0.1mから1.0mが記録された。
(3)感染症
7月3日、国家防災庁は、国内のデング熱罹患報告が増加傾向にあるとして注意を呼び掛けた。
4 新型コロナウイルス感染症関連
3月31 日以降現在まで、インドネシア政府は、中長期滞在者等一部の例外を除く全ての外国人のインドネシア訪問及びインドネシアでのトランジットの禁止措置を継続中。今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況により、インドネシア政府の政策も変更される可能性がある。また、一部の州及び地域において、感染拡大防止対策として来訪者及び住民の出入に制限を課しているため、来訪または滞在されている地域の状況及び情報に関する最新情報に留意する必要がある。外務省は当国に対し、以下のとおり感染症危険情報を発出しており、3月31日以降現在までレベル3(渡航中止勧告)が出されている。
ア 3月18日 レベル1(十分注意してください。)
イ 3月25日 レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)
ウ 3月31日 レベル3(渡航は止めてください。:渡航中止勧告)