在マカッサル領事事務所 海外安全対策情報

令和2年7月30日

2020年度第1四半期

1 一般治安情勢

 治安は概ね良好であるが、いくつか注意を要する。
 
(1)ひったくり、窃盗、置き引き、車上荒らし等の犯罪は日常生活において発生する可能性が高い。夜間の外出は極力控え、外出する場合は歩かずに車(自家用車、タクシー)を利用する。また昼間においても道を歩く際には、バイクによるひったくりが発生する可能性があるため周囲に注意を払い、道路側にカバンを持たない等の対策を行う。
 
(2)麻薬の売買が横行しており、薬物関連事件が多数発生している。インドネシアにおいては、麻薬関係法規の違反者は厳しく処罰され、場合によっては死刑あるいは禁固等の重刑が科されることもあるので、違法な薬物には絶対に手を出さない、また、事件に巻き込まれることのないように、繁華街の路地裏など麻薬取引が行われる可能性が高い場所には近づかないことが重要である。
 
(3)2019年8月以来数か月間、パプア州、西パプア州のほぼ全域で人権問題に絡んで断続的に行われたデモが暴動に発展する事例が複数回発生し、数千名規模の地域住民が州外へ避難するなどの事態に発展した。
 
(4)2019年9月下旬から10月初旬まで、インドネシア国内の各主要都市で、汚職撲滅委員会に関する法(KPK法)改正及び刑法改正案などへの抗議活動が活発化し、南スラウェシ州マカッサル市、東南スラウェシ州クンダリ市でも、一部で暴動に発展する事例が発生した。
 
(5)新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、失職者の増加などによる治安情勢の悪化が懸念される。現在のところ特段の治安悪化は認められていないが、失職者による犯罪も一部報じられているところ、被害の未然防止には十分注意する必要がある。
 

2 テロ情勢

 
(1)近年、インドネシア各地においてテロ(未遂を含む)事件が複数発生しており、2018年5月には東ジャワ州で複数の宗教施設や警察署を対象とした爆弾テロ事件が発生し、一般市民を含む多数の死傷者が出ている。また、2019年11月には北スマトラ州メダン市で警察署を標的とした自爆テロ事件が発生、2020年6月には南カリマンタン州南フルスンガイ県で警察車両に放火し、警察官1名を刺殺する事件が発生した。ついては、テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関係施設、宗教関連施設、ショッピングモールや公共交通機関等の不特定多数の人が集まる場所)を訪れる際は、常に周囲の状況に注意を払い、不審な状況を察知したら速やかにその場を離れるなど身の安全を確保することが必要。
 
(2)2020年1月11日にパプア州ンドゥガ県で武装グループと治安部隊の間で発生した銃撃戦により治安部隊が負傷した事件をはじめ、同地域では分離独立派組織と治安部隊との銃撃戦を含む衝突が度々発生しており、双方に多数の死傷者が発生しているほか、「パプア独立記念日」とされる2019年12月1日の前日には30名以上の分離独立派集団が治安当局に逮捕される事案が発生している。また、2020年3月30日、パプア州ミミカ県ティミカに所在する外資系鉱山会社の事務所周辺で襲撃事件が発生し、外国籍者を含めた数名が犠牲となった。この事件に関し、同地の分離独立派武装組織が犯行をほのめかす発言をしている(同年5月29日に一部犯人逮捕)。このほか、同年5月、分離独立派武装組織が関与したと見られる事件は以下のとおり。
 ア 2020年5月15日、同州パニアイ県の警察官詰所が武装集団による襲撃を受け、警察官1名が負傷、武器が強奪された。
 イ 2020年5月22日、同州インタン・ジャヤ県において、新型コロナウイルス感染症に係る政府機関所属の2名が、医薬品の搬送中に武装集団による襲撃を受け、うち1名が死亡、1名が負傷した。
 ウ 2020年5月29日、同州インタン・ジャヤ県において、同県の住民1名が武装集団による襲撃を受けて死亡した。
 
(3)2020年3月27日、中部スラウェシ州ポソ県において、救援物資を搬送していた治安部隊が「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」とされる武装グループから襲撃を受ける事案が発生した。同県では、現在も同グループによる治安部隊との銃撃戦や地元住民を殺傷する事件が以下のとおり報じられており、治安部隊への攻撃や困窮者のリクルートなど、コロナ禍における活発化を懸念させる動向も報告されている。
 ア 2020年4月8日、同県の農夫を治安部隊のスパイであるとして拉致、殺害。
 イ 2020年4月15日、同県内の銀行において、警備任務に就いていた警察官らを襲撃、武器を強奪しようとするも増援の到着により逃走。実行犯らは治安部隊により射殺された。報道によれば、実行犯らは自身の身体に爆発物を装着して犯行に及んでいた。
 ウ 2020年4月19日、同県の農夫を拉致、殺害。
 エ 2020年4月25日、同県内の山岳地帯において、MITと見られる武装グループと治安部隊との銃撃戦が発生。同グループの1名が射殺された。射殺された者が指名手配リストに該当する人物であることが確認されている。
 オ 2020年6月7日、同県内の山岳地帯において、MITと見られる武装グループと治安部隊との銃撃戦が発生。治安部隊1名の負傷を含め、双方に負傷者が発生した。
 
(4)パプア州ミミカ県及びプンチャック・ジャヤ県、中部スラウェシ州ポソ県は、従来より外務省海外安全ホームページにおいて、危険度レベル2「不要不急の渡航は止めてください。」の危険情報が発出されている地域であり、やむを得ず渡航・滞在する場合は、取得した滞在許可等に基づき、常に最新の情報収集に努め、現地事情に詳しい者を同行させるなど、特別な注意を払うとともに十分な安全対策が必要。
 
(5)新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴い、テロ組織の活動も低調化するとの見方がある一方、ISILやアルカイダ等ではこの世界的流行を「神の罰」と称し、混乱状態に付け込んで攻撃を促す呼び掛けも確認されている。また、経済活動の停滞により困窮し、政治・社会・経済に不満を募らせた市民が過激主義思想に共感し、いわゆるローンウルフ型やホームグロウン型のテロを引き起こす可能性に留意しなければならない。なお、上記(3)に記載の中部スラウェシ州ポソ県を拠点とした「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」はISIL支持を表明している。
 

3 災害

 
(1)地震
 ア 北マルク州近海において、2020年4月6日、マグニチュード6.1の地震が発生。震源は同州ジャイロロから北西122kmの近海、震源の深さは10km。
 イ マルク州近海において、2020年5月7日、マグニチュード7.3の地震が発生。震源は同州ババル諸島近海、震源の深さは133km。
 ウ 北マルク州近海において、2020年6月4日、マグニチュード7.1の地震が発生。震源は同州モロタイ島ダルバから北西89kmの近海、震源の深さは112km。数百の家屋が損壊した。
 エ マルク州近海において、2020年6月9日、マグニチュード6.0の地震が発生。震源は同州ブル島から南西126kmの近海、震源の深さは10km。
 オ 北スラウェシ州近海において、2020年6月23日、マグニチュード6.3の地震が発生。震源は同州南ボラアン・モンゴドウ県から南西42kmの近海、震源の深さは94km。
 カ 上記のいずれについても、津波被害は報告されていない。
 キ ほか、当事務所管轄地域各地でマグニチュード5を超える複数の地震が観測されている。
 
(2)水害
 ア 南スラウェシ州ジェネポント県において、2020年6月12日、豪雨による洪水及び地滑りが発生。行方不明者4名及び家屋や道路などが被災した。
 イ 南スラウェシ州バンタエン県において、2020年6月13日、大雨による河川氾濫のための洪水が発生。死者1名及び家屋や道路などが被災した。
 ウ ゴロンタロ州ボネ・ボランゴ県において、2020年6月14日、大雨による河川堤防の決壊のため鉄砲水が発生。負傷者3名及び避難者400名以上、家屋や道路などが被災した。
 エ 2020年6月28日、インドネシア国家防災庁(BNPB)は、引き続き豪雨による洪水等の災害に警戒するよう呼び掛けている。
 
(3)感染症
 ア ゴロンタロ州ゴロンタロ県において、2020年6月、同地の住民24名が、牛肉から感染したと疑われる炭疽症を発症したと報じられた。
 イ 当事務所管轄地域各地で、多数のデング熱罹患が報告されている。
 

4 新型コロナウイルス感染症関連

 
(1)3月31 日、インドネシア政府は当面の間、一部の例外を除く全ての外国人のインドネシア訪問及びインドネシアでのトランジットを禁止する旨を発表。今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては、インドネシア政府の政策も変更される可能性がある。また、一部の州及び地域において、感染拡大防止対策として来訪者及び住民の出入制限を課しているため、来訪または滞在されている地域の状況及び情報に関する最新情報に留意する必要がある。
 
(2)外務省は以下のとおり感染症危険情報を発出しており、3月31日以降現在まで、当国にはレベル3(渡航中止勧告)が出されている。
ア 3月18日 レベル1(十分注意してください。) 対象:全世界
イ 3月25日 レベル2(不要不急の渡航は止めてください。) 対象:当国を含む一部国の引き上げ
ウ 3月31日 レベル3(渡航は止めてください。:渡航中止勧告) 対象:対象:当国を含む一部国の引き上げ
 

5 邦人被害事案

 発生状況なし。
 

6 誘拐・脅迫事件発生状況

 邦人被害の事件は認知していない。
 

7 対日感情

 対日感情は基本的に良好であり、特段の変化は見られない。
 

8 日本企業の安全に関する諸問題

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、地方政府機関から企業に対し、就業時の感染防止に関する様々な規定が課されているため、所在地の政府機関が発する規定に関する最新情報に留意する必要がある。