在マカッサル領事事務所 海外安全対策情報
令和3年1月12日
2020年度第3四半期
1 一般治安情勢
治安は概ね良好であるが、いくつか注意を要する。ひったくり、窃盗、置き引き、車上荒らし等の犯罪は日常生活において発生する可能性が高い。夜間の外出は極力控え、外出する場合は歩かずに車(自家用車、タクシー)を利用する。また昼間においても道を歩く際には、バイクによるひったくりが発生する可能性があるため周囲に注意を払い、道路側にカバンを持たない等の対策を行う。
麻薬の売買が横行しており、薬物関連事件が多数発生している。インドネシアにおいては、麻薬関係法規の違反者は厳しく処罰され、場合によっては死刑あるいは禁固等の重刑が科されることもあるので、違法な薬物には絶対に手を出さない、また、事件に巻き込まれることのないように、繁華街の路地裏など麻薬取引が行われる可能性が高い場所には近づかないことが重要である。
ジャカルタ首都圏内において、非正規の自家製アルコール飲料(いわゆる「密造酒」「闇酒」)を摂取したことが原因とみられる在留邦人の死亡、中毒症状の発症等の事案が発生。同様のアルコール飲料は当国のほかの地域でも流通している可能性があり、もし疑わしき飲料が手元にある場合には絶対に飲用しない。いかなる場合でも、「密造酒」や「闇酒」と呼ばれる非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は差し控えるべきである。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、失職者の増加などによる治安情勢の悪化が懸念される。現在のところ特段の治安悪化は認められていないが、被害の未然防止には十分注意する必要がある。 このほか、各主要都市において、住民によるデモが発生することがあるが、当事務所管轄地域で発生した、民衆の抗議活動が暴動に発展した近年の事案は以下のとおり。
(1)2019年8月以来数か月間、パプア州、西パプア州のほぼ全域で、人権問題に関して断続的に行われたデモが、死傷者を伴う暴動に発展する事例が複数回発生し、数千名規模の地域住民が州外へ避難するなどの事態に発展した。
(2)2019年9月下旬から10月初旬まで、インドネシア国内の各主要都市で、汚職撲滅委員会に関する法(KPK法)改正及び刑法改正案などへの抗議活動が活発化し、南スラウェシ州マカッサル市、東南スラウェシ州クンダリ市でも、一部で暴動に発展する事例が発生した。治安部隊との衝突により、抗議活動の参加者及び治安部隊の双方に負傷者が発生している。
(3)2020年10月から11月にかけて、同年10月5日に国会で可決された雇用創出オムニバス法への抗議活動が全国で活発化。南スラウェシ州マカッサル市、北スラウェシ州マナド市をはじめ、インドネシア国内の各主要都市で散発的に暴動が発生。治安部隊との衝突により、抗議活動の参加者及び治安部隊の双方に負傷者が発生している。
2 テロ情勢
近年、インドネシア各地においてテロ(未遂を含む)事件が複数発生しており、2018年5月には東ジャワ州で複数の宗教施設や警察署を対象とした爆弾テロ事件が発生し、一般市民を含む多数の死傷者が出ている。また、2019年11月には北スマトラ州メダン市で警察署を標的とした自爆テロ事件が発生。ついては、テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関係施設、宗教関連施設、ショッピングモールや公共交通機関等の不特定多数の人が集まる場所)を訪れる際は、常に周囲の状況に注意を払い、不審な状況を察知したら速やかにその場を離れるなど身の安全を確保することが必要。新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴い、テロ組織の活動も低調化するとの見方がある一方、ISILやアルカイダ等ではこの世界的流行を「神の罰」と称し、混乱状態に付け込んで攻撃を促す呼び掛けも確認されている。また、経済活動の停滞により困窮し、政治・社会・経済に不満を募らせた市民が過激主義思想に共感し、いわゆるローンウルフ型やホームグロウン型のテロを引き起こす可能性に留意しなければならない。なお、中部スラウェシ州ポソ県を拠点とした「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」はISIL支持を表明している。
パプア州ミミカ県及びプンチャック・ジャヤ県、中部スラウェシ州ポソ県は、外務省海外安全ホームページにおいて、危険度レベル2「不要不急の渡航は止めてください。」の危険情報が発出されている地域であり、やむを得ず渡航・滞在する場合は、取得した滞在許可等に基づき、常に最新の情報収集に努め、現地事情に詳しい者を同行させるなど、特別な注意を払うとともに十分な安全対策が必要。なお、各地における近年の動向は以下のとおり。
(1)パプア州及び西パプア州
同地域ではインドネシアからの分離独立を標榜する武装組織と治安部隊との銃撃戦を含む衝突が度々発生しており、双方に多数の死傷者が発生しているほか、2020年3月30日、ミミカ県ティミカに所在する外資系鉱山会社の事務所周辺で、分離独立派武装組織が後に犯行を示唆した襲撃事件が発生し、同社に所属する外国籍者を含めた数名の民間人が犠牲となった。また、同年9月20日、インタン・ジャヤ県において、民間人(牧師)1名が銃撃を受け死亡。治安当局は武装組織による犯行であるとし、武装組織や教会関係者は治安当局による襲撃であるとの見解を示している。同28日、中央政府はこの事件に関し、調査チームを派遣すると発表した。このほか、令和2年度第3四半期中、同州内の治安に関する主な報道は以下のとおり。
ア 10月4日、パプア州ンドゥガ県ダル郡において、治安部隊が定期パトロール中に武装組織と遭遇し銃撃戦が発生。武装組織の構成員1名が射殺された。残る複数名は逃走し、治安部隊は拳銃1挺及び現金等を押収している。
イ 10月6日、パプア州ンドゥガ県ケニャム郡の市場に駐在する国軍詰所が武装組織による銃撃を受け、居合わせた地域住民が被弾し、死亡した。
ウ 10月7日、9月20日に発生した牧師殺害事件に関し、政治・法務・治安担当調整大臣の主導により組織された調査団がパプア州に到着。同日から調査を開始した。
エ 10月9日、パプア州インタン・ジャヤ県ヒタディパ郡において、中央政府から派遣された調査団の団員及び国軍兵士が武装組織による銃撃を受けた。被害者らはスガパ郡の病院で治療を受けたのち、翌日、ジャカルタへ搬送された。武装組織はこの事件への関与を認め、調査は中央政府の主導で恣意的に行われるべきではないと表明した。
オ 10月20日、パプア州プグヌンガン・ビンタン県において、物資搬送中の国軍車両が武装組織による銃撃を受け、国軍兵士3名が負傷した。
カ 10月21日、政治・法務・治安担当調整大臣は、パプア州に派遣した調査団による調査の結果、9月20日に発生した牧師殺害事件に関し、治安当局が関与している疑いがあると述べた。なお、第三者による犯行の可能性にも言及している。一方、この事件に関しては国家人権委員会主導の調査団を含め複数のチームが派遣されており、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル・インドネシアは、独自調査の結果は国軍の関与を示していると述べた。
キ 10月26日、パプア州インタン・ジャヤ県スガパ郡において、武装組織約50名に対し、治安部隊が掃討作戦を実行。武装組織の構成員1名が射殺、2名が拘束された。射殺された構成員は、10月9日の調査団襲撃事件への関与が疑われている。なお、武装組織は射殺された1名が構成員であることを否定し、宗教専門家であった旨の声明を発出。
ク 11月6日、パプア州インタン・ジャヤ県ティティギ郡において、治安当局がパトロール活動中に武装組織による襲撃を受け、国軍兵士2名が被弾、うち1名が死亡した。
ケ 11月20日、パプア州プンチャック県シナ郡において、イラガ郡に移動中であった地域住民が武装組織による襲撃を受け、2名が被弾、うち1名が死亡した。
コ 11月26日、パプア州ンドゥガ県パル郡において、治安当局と武装組織による銃撃戦が発生。国軍兵士3名が負傷した。
サ 11月27日、西パプア州ソロン市で行われた同地域の独立を求めるデモにおいて、投石や火炎瓶の投てきを伴った暴動が発生。治安当局側4名、記者1名が負傷し、病院に搬送された。また、「明けの明星旗」を用いたとして6名が拘束された。
シ 12月1日、ベニー・ウェンダ・西パプア統一解放運動(ULMWP)議長は、同組織の公式サイトにおいて、同地域の独立を宣言し、自らが大統領となり、独自の憲法を施行すると述べた動画を公開した。同議長は宣言当時イギリスに滞在しており、この宣言に関し、政府関係者に加え、同地域の武装組織からも支持できないとして表明されている。
ス 12月11日、西パプア州マイブラ県東アイファ郡において、地域住民2名が暴行を受け、うち1名が死亡。治安当局はこの事件に関し、西パプア国家委員会(KNPB)の犯行であるとしている。
(2)中部スラウェシ州ポソ県
2020年3月27日、救援物資を搬送していた治安部隊が「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」とされる武装グループから襲撃を受ける事案が発生した。同県では同グループによる治安部隊との銃撃戦や地元住民を殺傷する事件が引き続き報じられており、治安部隊への攻撃や困窮者のリクルートなど、コロナ禍における活発化を懸念させる動向も報告されている。このほか、令和2年度第3四半期中、同グループに関する主な報道は以下のとおり。
ア 11月7日、同州パル市において、治安当局が同グループに所属している2名が潜伏していると見られる住居を強襲。うち1名が逮捕された。
イ 11月17日、同州パリギ・モウトン県において、同グループの構成員と見られる2名が、治安当局により射殺された。
ウ 11月27日、同州シギ県パロロ郡において、地域住民である4名が殺害された。同グループによる犯行と見られており、約10名が近隣民家に放火したうえ、食料を強奪した。
3 災害
(1)地震 当事務所管轄地域各地でマグニチュード5を超える複数の地震が観測されており、令和2年度第3四半期中に大きな被害は報じられていないものの、引き続き津波を含む地震の発生に注意を要する。(2)水害
国家防災庁は、引き続きラニーニャ現象に伴う急激な大雨による洪水等の被害に注意を呼び掛けている。
4 新型コロナウイルス感染症関連
3月31 日以降現在まで、インドネシア政府は、中長期滞在者等一部の例外を除く全ての外国人のインドネシア訪問及びインドネシアでのトランジットの禁止措置を継続中。今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況により、インドネシア政府の政策も変更される可能性がある。また、一部の州及び地域において、感染拡大防止対策として来訪者及び住民の出入に制限を課しているため、来訪または滞在されている地域の状況及び情報に関する最新情報に留意する必要がある。外務省は当国に対し、以下のとおり感染症危険情報を発出しており、3月31日以降現在までレベル3(渡航中止勧告)が出されている。
ア 3月18日 レベル1(十分注意してください。)
イ 3月25日 レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)
ウ 3月31日 レベル3(渡航は止めてください。:渡航中止勧告)