在マカッサル領事事務所 海外安全対策情報

令和3年4月13日

2020年度第4四半期

1 一般治安情勢

 治安は概ね良好であるが、いくつか注意を要する。
 
 ひったくり、窃盗、置き引き、車上荒らし等の犯罪は日常生活において発生する可能性が高い。夜間の外出は極力控え、外出する場合は歩かずに車(自家用車、タクシー)を利用する。また昼間においても道を歩く際には、バイクによるひったくりが発生する可能性があるため周囲に注意を払い、道路側にカバンを持たない等の対策を行う。
 麻薬の売買が横行しており、薬物関連事件が多数発生している。インドネシアにおいては、麻薬関係法規の違反者は厳しく処罰され、場合によっては死刑あるいは禁固等の重刑が科されることもあるので、違法な薬物には絶対に手を出さない、また、事件に巻き込まれることのないように、繁華街の路地裏など麻薬取引が行われる可能性が高い場所には近づかないことが重要である。
 ジャカルタ首都圏内において、非正規の自家製アルコール飲料(いわゆる「密造酒」「闇酒」)を摂取したことが原因とみられる在留邦人の死亡、中毒症状の発症等の事案が発生。同様のアルコール飲料は当国のほかの地域でも流通している可能性があり、もし疑わしき飲料が手元にある場合には絶対に飲用しない。いかなる場合でも、「密造酒」や「闇酒」と呼ばれる非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は差し控えるべきである。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、失職者の増加などによる治安情勢の悪化が懸念される。現在のところ特段の治安悪化は認められていないが、被害の未然防止には十分注意する必要がある。
 このほか、各主要都市において、住民によるデモが発生することがあるが、当事務所管轄地域で発生した、民衆の抗議活動が暴動に発展した近年の事案は以下のとおり。
 
(1)2019年8月以来数か月間、パプア州、西パプア州のほぼ全域で、人権問題に関して断続的に行われたデモが、死傷者を伴う暴動に発展する事例が複数回発生し、数千名規模の地域住民が州外へ避難するなどの事態に発展した。

(2)2020年10月から11月にかけて、同年10月5日に国会で可決された雇用創出オムニバス法への抗議活動が全国で活発化。南スラウェシ州マカッサル市、北スラウェシ州マナド市をはじめ、インドネシア国内の各主要都市で散発的に暴動が発生。治安部隊との衝突により、抗議活動の参加者及び治安部隊の双方に負傷者が発生している。
 

2 テロ情勢

  近年、インドネシア各地においてテロ(未遂を含む)事件が複数発生しており、2018年5月には東ジャワ州で複数の宗教施設や警察署を対象とした爆弾テロ事件が発生し、一般市民を含む多数の死傷者が出ている。また、2019年11月には北スマトラ州メダン市で警察署を標的とした自爆テロ事件が発生。2021年3月28日には南スラウェシ州マカッサル市の教会で自爆テロ事件が発生、同31日にジャカルタの国家警察本部で銃乱射事件が発生。この2件のテロ事件の実行犯らは死亡しているものの、この実行犯らはテロ組織「Jamaah Ansharut Daulah(JAD)(ジャマー・アンシャルット・ダウラ)」との関連が疑われており、事件発生後、国内で多数のテロ容疑者が逮捕されたが、引き続き治安当局は警戒を強めている。
 ついては、テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関係施設、宗教関連施設、ショッピングモールや公共交通機関等の不特定多数の人が集まる場所)を訪れる際は、常に周囲の状況に注意を払い、不審な状況を察知したら速やかにその場を離れるなど身の安全を確保することが必要。
 パプア州ミミカ県及びプンチャック・ジャヤ県、中部スラウェシ州ポソ県は、外務省海外安全ホームページにおいて、危険度レベル2「不要不急の渡航は止めてください。」の危険情報が発出されている地域であり、やむを得ず渡航・滞在する場合は、取得した滞在許可等に基づき、常に最新の情報収集に努め、現地事情に詳しい者を同行させるなど、特別な注意を払うとともに十分な安全対策が必要。なお、各地における近年の動向は以下のとおり。
 
(1)パプア州及び西パプア州
 同地域ではインドネシアからの分離独立を標榜する武装組織と治安部隊との銃撃戦を含む衝突が度々発生しており、双方に多数の死傷者が発生しているほか、2020年3月30日、ミミカ県ティミカに所在する外資系鉱山会社の事務所周辺で襲撃事件が発生(分離独立派武装組織が後に犯行を示唆)。同社に所属する外国籍者を含めた数名の民間人が犠牲となった。また、同年9月20日、インタン・ジャヤ県において、民間人(牧師)1名が銃撃を受け死亡。この事件に関し、同年10月21日、政治・法務・治安担当調整大臣は、パプア州に派遣した調査団による調査の結果、治安当局が関与している疑いがあると述べた。なお、第三者による犯行の可能性にも言及している。一方、この事件に関しては国家人権委員会主導の調査団を含め複数のチームが派遣されており、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル・インドネシアは、独自調査の結果は国軍の関与を示していると述べた。
 このほか、令和2年度第4四半期中、同州内の治安に関する主な報道は以下のとおり。
 ア 2020年12月31日、ミミカ県警察署長は、2020年における同県テンバガプラ地域でのテロ事件は、近年最も多数件発生していると発表。2017年22回、2018年12回、2019年4回、2020年25回。同年中、同地域で合計49名が逮捕され、銃9挺及び弾薬680発が押収された。
 イ 2021年1月6日、ミミカ県テンバガプラ郡において、民間企業が所有するヘリコプターが、高度1,500フィートを飛行中に何者かの狙撃を受け、機体左側面に被弾した。この事件による死傷者はいない。
 ウ 同1月6日、インタン・ジャヤ県ビアンドガ郡パガンバ村の空港において、乗客2名及び食料品等を積載し着陸した民間プロペラ機が、武装組織による襲撃を受け、積荷を強奪されたうえ、機体に放火された。この事件による死傷者はいない。
 エ 同1月7日、プンチャック県において、2か所の4G通信用基地局が焼失し、周辺の4G通信が一時断絶した。治安当局は武装組織による犯行であるとしている。
 オ 同1月10日、インタン・ジャヤ県ティティギ郡において、武装組織と治安部隊との銃撃戦が発生。国軍兵士1名が死亡した。
 カ 同1月17日、ジャヤウィジャヤ県ワメナ第2B級刑務所において、殺人罪で収監中の囚人を含む19名が看守を刃物で脅して脱獄し、付近まで迎えに来ていた車両に乗り込んで逃走した。
 キ 同1月22日、インタン・ジャヤ県ティティギ郡において、武装組織と治安部隊との銃撃戦が発生。国軍兵士2名が死亡した。
 ク 同1月30日、インタン・ジャヤ県スガパ郡とホメヨ郡の境界において、地域住民1名が射殺された。武装組織は治安部隊に対してこの事件に関する声明を発し、射殺された地域住民は治安当局によるスパイであったとしている。
 ケ 武装組織が、インタン・ジャヤ県において、治安部隊への攻撃を実施するとのビラを撒いていることが発覚したことに関し、同2月2日、パプア州警察本部は、積極的な交戦は避けたいとしつつ、治安部隊は屈さずに応戦すると応じた。また、地域住民に被害が及ぶことを望んでいないと述べた。これを受けたインタン・ジャヤ県議会議員の呼び掛けにより、同県住民が他地域へ避難する動きが確認されている。
 コ 同2月4日、インタン・ジャヤ県ヒタディパ郡において、武装組織と治安部隊との銃撃戦が発生。その後ティティギ郡における交戦の際、武装組織構成員1名が射殺された。
 サ 同2月8日、インタン・ジャヤ県スガパ郡ビロガイ村において、灯油販売を装った武装組織構成員により、地域住民1名が銃撃を受けた。被害者は治療を受けており、翌日ミミカ県へ移送された。この事件を受けて、地域住民300名以上が教会等に一時避難。その後も引き続き安定しない同地の情勢に不安を煽られた住民の避難が相次ぎ、最終的な避難者数は約1,000名とも報じられている。
 シ 同2月9日、プンチャック県イラガ郡において、地域住民1名が複数名からの襲撃を受けて死亡した。治安当局は武装組織による犯行であるとしている。翌10日、治安当局が、被害者が乗車していたバイクを回収しようとしたところ、武装組織による銃撃を受け、銃撃戦が発生。この銃撃戦による死傷者はいない。
 ス 同2月12日、インタン・ジャヤ県スガパ郡マンバ村において、国軍兵士1名が商店を訪れたところ、バイクで通りがかった不審者2名による銃撃を受けた。同兵士はジャヤプラへ搬送され治療を受ける。治安当局は武装組織が関与しているとして調査中。
 セ 同2月13日、プンチャック県イラガ郡イランベ村において、武装組織と治安部隊との銃撃戦が発生。国軍兵士1名の負傷が確認されている。
 ソ 同2月15日、インタン・ジャヤ県スガパ郡マンバ村に駐在する国軍詰所において、武装組織からの銃撃により国軍兵士1名が被弾。搬送中に死亡した。治安部隊は兵士を射殺した武装組織任を追跡し銃撃、同構成員は負傷しつつも逃走し、医療機関に搬送された。同構成員が、ほか2名の構成員とともに医療機関から逃走及び治安部隊からの武器の強奪を試みたところ、3名全員が治安部隊により射殺された。
 タ 同2月16日、プンチャック県ベオガ郡ユルコマ村において、商店を営む地域住民が、3名の不審者による襲撃を受けて負傷した。治安当局は武装組織との関連を調査する。
 チ 同2月19日、プンチャック県イラガ空港において、治安部隊と武装組織との銃撃戦が発生。武装組織構成員1名が射殺された。
 ツ 同2月28日、インタン・ジャヤ県ヒタディパ郡において、治安部隊が移動中に武装組織からの銃撃を受け、銃撃戦が発生。武装組織構成員1名が死亡した。
 テ 同2月28日、ミミカ県マイル53付近において、治安部隊が移動中に武装組織からの銃撃を受け、銃撃戦が発生。武装組織構成員2名が死亡した。
 ト 同3月6日、インタン・ジャヤ県スガパ郡において、治安部隊と武装組織との銃撃戦が発生。武装組織構成員2名が被弾、うち1名が死亡した。
 ナ 同3月12日、プンチャック県ワンベ飛行場において、3名の乗客及び操縦士を乗せた民間航空機が武装組織30名によって占拠された。約2時間後に解放され、負傷者はいなかった。武装組織構成員のうち、2名がライフルを所持していた。
 ニ 同3月21日、ミミカ県マイル48付近において、武装組織の捜索活動に当たっていた治安部隊は、誤射により地域住民を死亡させた。治安当局は、武装組織の掃討作戦が遂行中であるため、同県マイル43からマイル50周辺の立入りを一時的に禁じるとともに、協力を求めている。
 
(2)中部スラウェシ州ポソ県
 2020年11月27日、同州シギ県パロロ地区の集落において、「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」と見られる武装グループ約10名が地域住民ら4名を殺害。民家数軒に放火したうえ食糧など物資を強奪した。同州ポソ県及びその近接地域では同グループによる治安部隊との銃撃戦や地元住民を殺傷する事件が引き続き報じられており、治安部隊は同グループの掃討作戦を遂行中であるも壊滅させるには至らず、同11月27日の事件をもって更なる増派が決定された。このほか、令和2年度第4四半期中、同グループに関する主な報道は以下のとおり。
 ア 2021年2月23日、パリギ・モウトン県サルバンガ地域において、同グループ指名手配犯らと見られる集団と治安部隊の銃撃戦が発生。2名の手配犯らが被弾した。
 イ 同3月1日、ポソ県北ポソ・ペシシル郡において、同グループと治安部隊が交戦。同グループ構成員2名が死亡した。翌日、治安当局は同グループの手配犯は残すところ9名であると述べた。
 

3 災害

(1)地震
 ア 1月14日及び同15日、西スラウェシ州マジェネ県を震源とした、マグニチュード5.9及び6.2の地震が発生。いずれも震源の深さは10km。津波は観測されていない。建物の倒壊や発災後の停電など甚大な被害が発生し、多数の死傷者及び避難者が発生した。
 イ 1月21日、北スラウェシ州タラウド諸島県沖合において、マグニチュード7.1の地震が発生。震源は同県メロングアネから北東134kmの沖合、震源の深さは154km。
 ウ ほか、当事務所管轄地域各地でマグニチュード5を超える複数の地震が観測されている。
 
(2)水害
 ア 1月4日、北スラウェシ州サンギヘ諸島県において、豪雨による洪水及び土砂崩れが発生。1名が死亡し、200名以上が避難した。多くの家屋や公共施設が被災した。
 イ 1月16日、北スラウェシ州マナド市において、豪雨による洪水及び土砂崩れが発生。6名が死亡、500名以上が避難した。
 ウ 1月22日、北スラウェシ州マナド市において、豪雨による洪水が発生。2名が死亡、2名が負傷し、2,000名以上が避難した。
 

4 新型コロナウイルス感染症関連

  3月31 日以降現在まで、インドネシア政府は、中長期滞在者等一部の例外を除く全ての外国人のインドネシア訪問及びインドネシアでのトランジットの禁止措置を継続中。今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況により、インドネシア政府の政策も変更される可能性がある。また、一部の州及び地域において、感染拡大防止対策として来訪者及び住民の出入に制限を課しているため、来訪または滞在されている地域の状況及び情報に関する最新情報に留意する必要がある。
 外務省は当国に対し、以下のとおり感染症危険情報を発出しており、3月31日以降現在までレベル3(渡航中止勧告)が出されている。
 ア 3月18日 レベル1(十分注意してください。)
 イ 3月25日 レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)
 ウ 3月31日 レベル3(渡航は止めてください。:渡航中止勧告)
 

5 邦人被害事案

 発生状況なし。
 

6 誘拐・脅迫事件発生状況

 邦人被害の事件は認知していない。
 

7 対日感情

 対日感情は基本的に良好であり、特段の変化は見られない。
 

8 日本企業の安全に関する諸問題

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、地方政府機関から企業に対し、就業時の感染防止に関する様々な規定が課されているため、所在地の政府機関が発する規定に関する最新情報に留意する必要がある。