在マカッサル領事事務所 海外安全対策情報
令和4年4月8日
2021年度第4四半期
1 一般治安情勢
治安は概ね良好であるが、いくつか注意を要する。(1)ひったくり、窃盗、置き引き、車上荒らし等の犯罪は日常生活において発生する可能性が高い。夜間の外出は極力控え、外出する場合は歩かずに車(自家用車、タクシー)を利用する。また昼間においても道を歩く際には、バイクによるひったくりが発生する可能性があるため周囲に注意を払い、道路側にカバンを持たない等の対策を行う。
(2)麻薬の売買が横行しており、薬物関連事件が多数発生している。インドネシアにおいては、麻薬関係法規の違反者は厳しく処罰され、場合によっては死刑あるいは禁固等の重刑が科されることもあるので、違法な薬物には絶対に手を出さない、また、事件に巻き込まれることのないように、繁華街の路地裏など麻薬取引が行われる可能性が高い場所には近づかないことが重要である。
(3)ジャカルタ首都圏内において、非正規の自家製アルコール飲料(いわゆる「密造酒」「闇酒」)を摂取したことが原因とみられる在留邦人の死亡、中毒症状の発症等の事案が発生。同様のアルコール飲料は当国のほかの地域でも流通している可能性があり、もし疑わしき飲料が手元にある場合には絶対に飲用しない。いかなる場合でも、「密造酒」や「闇酒」と呼ばれる非正規のアルコール飲料の購入及び摂取は差し控えるべきである。
(4)新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、失職者の増加などによる治安情勢の悪化が懸念される。現在のところ特段の治安悪化は認められていないが、被害の未然防止には十分注意する必要がある。
(5)このほか、各主要都市において、住民によるデモが発生することがあるが、当事務所管轄地域で発生した、民衆の抗議活動が暴動に発展した近年の事案は以下のとおり。
ア 2019年8月以来数か月間、パプア州、西パプア州のほぼ全域で、人権問題に抗議して断続的に行われたデモが、死傷者を伴う暴動に発展する事例が複数回発生し、数千名規模の住民が州外へ避難するなどの事態に発展した。
イ 2020年10月から11月にかけて、同年10月5日に国会で可決された雇用創出オムニバス法への抗議活動が全国で活発化。南スラウェシ州マカッサル市、北スラウェシ州マナド市をはじめ、インドネシア国内の各主要都市で散発的に暴動が発生。治安部隊との衝突により、抗議活動の参加者及び治安部隊の双方に負傷者が発生している。
2 テロ情勢
近年、インドネシア各地においてテロ(未遂を含む)事件が複数発生しており、2021年3月28日には南スラウェシ州マカッサル市の教会で自爆テロ事件が発生、同31日にジャカルタの国家警察本部で銃乱射事件が発生。この2件のテロ事件においては、実行犯らが死亡したほかに死者は発生していない。この実行犯らはテロ組織「Jamaah Ansharut Daulah(JAD)(ジャマー・アンシャルット・ダウラ)」との関連が疑われており、事件発生後、国内でJADとの関与が疑われる多数のテロ容疑者が逮捕され、南スラウェシ州マカッサル市及びその周辺地域では50名以上が逮捕されたが、引き続き治安当局は警戒を強めている。過去には2018年5月に東ジャワ州で複数の宗教施設や警察署を対象とした爆弾テロ事件が発生し、一般市民を含む多数の死傷者が出ている。また、2019年11月には北スマトラ州メダン市で警察署を標的とした自爆テロ事件が発生した。ついては、当国において近年テロの標的となることが比較的多い場所(警察関係施設、宗教関連施設等)をやむなく訪れる際は滞在時間を最小限にとどめ、常に周囲の状況に注意を払い、不審な状況を察知したら速やかにその場を離れるなど身の安全を確保することが必要。
また、ショッピングモールやホテル、公共交通機関等の不特定多数の人が集まる場所(ソフトターゲット)がテロの標的となる可能性もあることから、訪問する際は注意が必要。
パプア州ミミカ県及びプンチャック・ジャヤ県、中部スラウェシ州ポソ県は、外務省海外安全ホームページにおいて、危険度レベル2「不要不急の渡航は止めてください。」の危険情報が発出されている地域であり、やむを得ず渡航・滞在する場合は、取得した滞在許可等に基づき、常に最新の情報収集に努め、現地事情に詳しい者を同行させるなど、特別な注意を払うとともに十分な安全対策が必要。なお、各地における近年の動向は以下のとおり。
(1)パプア州及び西パプア州
同地域ではインドネシアからの分離独立を標榜する武装集団と治安部隊との銃撃戦を含む衝突が度々発生しており、その双方及び巻き込まれた地域住民に多数の死傷者が発生しているほか、2020年3月30日、ミミカ県ティミカに所在する外資系鉱山会社の事務所周辺で襲撃事件が発生。同社に所属する外国籍者を含めた数名の民間人が犠牲となった。
2021年4月29日、インドネシア政府は、相次いで発生した襲撃事件を背景に、分離独立運動の総称とされる「自由パプア運動(OPM)」の軍事組織「西パプア民族解放軍(TPNPB)」とその関係組織をテロ組織と認定。これにより治安当局は対テロ特殊部隊による掃討作戦参加が可能となったが、OPM側は独立運動に対する弾圧であるとして反発を強めている。
治安当局によれば、過去、同地における銃撃戦による殉職者は44名(うち、15名が同地の治安維持を目的とした警察及び国軍の混成部隊から)。また、同地の銃撃戦は増加傾向にあり、2020年は49件であった発生件数は2021年には92件にのぼった。
2022年1月10日、インドネシア政府は、同地における治安維持活動は、武装集団の掃討ではなく平和的な手段に重きを置くとして方針転換を表明。この指針は同月25日以降から適用されるとしたが、この表明のあとも、引き続き武装集団と治安部隊との死傷者を伴う銃撃戦の発生が相次いで報じられている。
このほか、2022年1月以降において、地域住民等非戦闘員に被害が及んだ事件に関する主な報道は以下のとおり。
ア 2月23日、パプア州プンチャック県イラガ地区において、トラック運転手が武装集団によって射殺された。銃撃後、武装集団はその場から逃走し、トラック運転手の家を放火した。
イ 3月2日、同県ベオガオ地区において、武装集団による襲撃事件が発生。携帯電話の基地局の修理中に襲撃をうけ、9人が被害にあい、内8人が死亡した。同事件は同僚の1人が被害を発見し通報した。
ウ 3月7日パプア州ヤフキモ県セラダラ地区において、金採掘グループの民間人1名が武装集団に襲われ死亡した。
(2)中部スラウェシ州ポソ県
2020年11月27日、同州シギ県パロロ地区の集落において、「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」と見られる武装グループ約10名がキリスト教徒の地域住民ら4名を殺害。民家数軒に放火したうえ食糧など物資を強奪した。同州ポソ県及びその周辺地域では同グループによる治安部隊との銃撃戦や地元住民を殺傷する事件が引き続き発生しており、治安部隊は同グループの掃討作戦を継続させ、同11月27日の事件をもって更なる増派が決定された。その後、2021年2月及び3月、ポソ県及びその隣接県であるパリギ・モウトン県の山間部で治安部隊と同グループと見られる武装集団との銃撃戦が発生している。
2021年9月19日、パリギ・モウトン県の山間部において、同グループのリーダーと目されている指名手配犯が治安部隊によって射殺された。また、2022年1月4日、同県において、さらに同グループの構成員が射殺された。これをもって治安当局は、同グループの残党は3名であり、ポソ県及びその周辺地域の山間部に潜伏していると見ている旨発表した。
3 災害
(1)地震当事務所管轄地域各地でマグニチュード5を超える複数の地震が観測されており、2021年第4四半期においては、特に大きな被害は報じられていないものの、引き続き津波を含む地震の発生に注意を要する。なお、昨年12月にスラウェシ島南部フローレンス沖合で発生したマグニチュード7.4の地震では、津波は発生しなかったものの、南スラウェシ州の南端のスラヤール諸島で家屋の損壊等の被害が発生した。
(2)水害
国家防災庁は、引き続きラニーニャ現象に伴う急激な大雨による洪水等の被害に注意を呼び掛けている。
4 新型コロナウイルス感染症関連
今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況により、インドネシア政府の政策も変更される可能性がある。国内移動に関しても感染拡大防止対策として事前検査やワクチン接種などを移動の条件として規定しているため、来訪または滞在されている地域ごとの感染状況や規制内容に関する最新情報に留意する必要がある。我が国外務省はインドネシアに対する感染症危険情報を発出しており、2022年4月1日以降現在までレベル2(渡航は止めてください。:渡航中止勧告)が出されている。
なお、インドネシアへの渡航に関して、2022年4月現在、査証免除は停止中。日本人に対する観光及び政府用務目的の特別到着ビザ(VOA)は、ジャカルタのスカルノハッタ国際空港を含む主要空港等で発給されている。新規査証取得は渡航目的が限定されており、最新情報については在京インドネシア大使館または在大阪インドネシア総領事館に照会する必要がある。
5 邦人被害事案
発生状況なし。6 誘拐・脅迫事件発生状況
邦人被害の事件は認知していない。7 対日感情
対日感情は基本的に良好であり、特段の変化は見られない。8 日本企業の安全に関する諸問題
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、地方政府機関から企業に対し、就業時の感染防止に関する様々な規定が課されており、それらは頻繁に内容が更新されるため、所在地の政府機関が発する規定に関する最新情報に留意する必要がある。