自然災害対策手引き
令和6年2月2日
自然災害対策手引き(令和6年2月版)
I.序言
インドネシアは、日本と同様、環太平洋火山帯に位置しており、国内には約130の火山が存在します。また、2004年12月、約16万人以上の方が亡くなったスマトラ島沖地震をはじめ、多くの地震、それに伴う津波の発生により、甚大な被害を伴う災害が繰り返し発生しています。さらに、当地特有の「雨期」においては、山間部における土砂災害、都市部における洪水等による被害も発生しています。このように、インドネシアは「災害頻発地域」ではありますが、防災・減災に繋がる都市部での建物の免震性、山間部における土砂災害対策等のインフラ整備、いわゆる「ハード面」の対策は必ずしも万全とは言えません。さらに、災害発生時の避難計画や地域における避難訓練等の「ソフト面」においても確立されていない状況です。このような中、ひとたび大きな災害が発生した場合、皆様自身の命を守る行動、公的な支援が到着するまでの「自助努力」による発災後の生活が、非常に重要となってきます。 |
日本と同様の災害頻発国でありますが、日本とは言葉も文化も災害対策に関する考え方や備えも違うインドネシアにおいて、どのように自然災害に備え、皆様と御家族の生活を守る防災、減災に繋げるのか、この資料を一読していただき、日頃からの心得や発災時の行動の一助に役立てていただければと思います。 |
なお、自然災害が発生した場合、総領事館から皆様への安否確認等を行いますが、災害により被害に遭ってしまった場合には、速やかに以下の総領事館連絡先までご連絡下さい。 ・開館時間中(平日8時~16時45分) 031-503-0008 ・閉館時間中(夜間・休日) 0800-1401934 ・当館メールアドレス ryoji@sb.mofa.go.jp また、自然災害が発生した場合、当館から皆様へ在留届及び「たびレジ」に登録されたメールアドレスへ情報を発信します。当地に3ヶ月以上お住まい(予定)の方は在留届の提出(当館窓口若しくはオンライン)、また、当地に観光や出張で短期間の滞在を予定している方は「たびレジ」の登録を行っていただきますよう、よろしくお願いします。 ・ 外務省オンライン在留届 https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/index.html ・ 外務省たびレジ登録サイト https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/index.html |
II.自然災害対策の手引き
目 次 1.事前の備え 2.自然災害発生時の対策 (1) 地震・津波による災害 (2) 火山災害 (3) 豪雨災害・土砂災害 3.参考資料 (1) 備蓄品等のチェックリスト (2) 情報収集関連リスト |
1.事前の備え ~自分と家族の安全は、自らが守るとの心構え~ 災害に対する事前の心構えとして、「自助=自分と家族の安全を最優先に考え、災害発生時の対応を検討・準備しておくこと」が非常に重要となってきます。そのために、 ○ 日頃から、家族の中で災害が発生した際の行動を計画しておくこと ○ 単身者等のお一人で生活している方は、災害発生時の対応を考えておくこと ○ 企業として、災害発生時の駐在員の方の安否確認方法を検討しておくこと ○ 各家庭で非常用の備蓄品を蓄え、持出品の整理をしておくこと ○ 発生情報の入手先の選定 等の事前の備えが必要であり、重要となってきます。 また、ご自身がお住まいの地域では、どのような災害が発生しやすいのか、過去に発生した災害時に、どのようなことが行ったのか等の「事前情報の収集」も重要となってきます。このような情報は、地元の方が把握していますので、所属する会社等で働く現地職員などから話を聞いて、過去の発生時の教訓を生かした事前の備えを行ってください。 |
2.自然災害発生時の対策 ~減災に向けた取組~ (1) 地震・津波による災害 インドネシアにおいて発生する地震には、震源が陸地ではなく、海底である場合が多いです。そして、その地震の震源が浅い場合、大きな津波が発生するおそれが高まります。また、インドネシアの建築物については、十分な免震性を有しているとは言い難い状況でもあります。このような中、万が一、大きな揺れを感じる地震が発生した場合、また、揺れは大きくなくとも、日本と同様に海に囲まれた地形のインドネシア近海において、マグニチュードが大きい地震が浅い震源で発生した場合は津波の発生も考えられます。 まずは、ご自身がお住まいの建物に関する情報を得たうえで、地震・津波が発生する時間帯や家族の生活スタイル、また、災害発生時の行動、例えば避難経路や家族との連絡手段や集合場所の決定等について、各自シミュレーションを考えて、発災時の身を守る行動や、その後の生活における必要な物資の確保等、各自「減災」に繋がる事前の備えを行ってください。 そのうえで、実際に地震・津波が発生した場合、次のことに注意して行動してください。 ○ 地震発生時の行動 ~まずは命を守る行動を~ 大きな揺れを感じる地震が発生した場合、慌てずに、以下の行動に心掛けてください。 ・ 屋内であれば、頑丈な机等の下に避難し、必要であればクッション等で頭 を守る等の身体を守る行動をとる。また、出来るだけ窓から離れた場所で避 難し、夜間・早朝で就寝中も同様の行動を心掛ける。 ・ 屋外であれば、周囲の交通状況等に配意しつつ、建物から離れた場所で持 っている鞄等で頭を守る等の身体及び命を守る行動をとる。 ・ 車両乗車時には、運転手に速やかに安全な道路脇に停車するように伝え、 揺れが収まるまで車内で待機する。 ・ ショッピングモール等の商業施設や公共交通機関等、不特定多数の人が集 まる場所では、不用意に外に飛び出ることなく、持っている物で落ちてくる 天井やガラス等から頭を守る。揺れが収まった後、周囲の状況を見ながら慌 てずに行動する(過去の地震では、地元住民が地震発生と共にパニックとな り建物の外に逃げる状況が確認されていますが、揺れの最中の移動は危険で あり、また、建物出入口に多数の人が殺到した場合、圧死等の二次災害に遭 う可能性が高くなります) ○ 避難時の行動 ~冷静かつ慎重な行動~ 揺れが収まり、その場から避難する場合には、以下の行動に心掛けてください。 ・ 屋内からの避難の際には、必ず靴を履き、用意していた非常用備蓄品や持 出品を携行したうえで屋外に避難する。但し、屋外で火災が発生している場 合等、引き続き屋内での避難や待機が安全と判断した場合には、余震による 被害に十分注意しながら屋内に留まる。 ・ 屋外では、地震による建物や壁等の損壊により、地面に障害物が散乱して いる場合があり、また、車両による移動では発災後の渋滞等で身動きがとれ ない場合も考えられるため、基本的には徒歩による安全な場所への避難を考 える。 ・ 津波に関する情報が出た場合、出来るだけ海や河口からは離れた高台へ避 難する。そのような適切な場所が無い場合には、付近の比較的頑丈な建物の 上階への避難も考慮する。 ・ 夜間の避難においては、停電していることを想定し、懐中電灯等の明か りを確保したうえで、屋内・屋外共に足下及び頭上からの落下物に注意しな がら移動する。 全ての自然災害は、発生の予測が不可能です。その中で、地震及び津波は、皆さんの普段の生活で発生した際の被害が大きく、被害を如何に小さくすること、すなわち「防災」と「減災」が非常に重要となってきます。繰り返しになりますが、今一度、「事前の備え」について考えていただき、必要な準備等をお願いします。 |
(2) 火山災害 当館管轄地である東ジャワ州の南部には、2021年、2022年と2年連続大規模な噴火を記録したスメル山をはじめ、2000年代に噴火を記録しているブロモ山(2004年6月に噴火)、ケルート山(2014年2月に噴火)、ラウン山(2015年6月に噴火)と、多くの活火山が位置しています。これら活火山の大規模噴火においては、火砕流、溶岩流出、雨期と重なった際の土石流、泥流の発生及び火山灰の降灰被害等により、大きな人的物的被害が確認されています。 これら活火山の活動は、インドネシア国家防災庁(BNPB)等の専門機関が、火山性地震等に関する噴火予兆に関する監視活動を行っており、その都度、情報発信をしています。 東ジャワ州南部は、これら活火山を含む自然の観光スポットが多くあり、多くの在留邦人や観光客の方が訪れる機会があると思いますが、同地域及び周辺を訪れる際には、火山活動に関する情報を事前に収集し、少しでも危険がある場合には訪問中止を検討される等、火山災害の被害に遭わない慎重な行動を心掛けてください。 また、同地域及び周囲にお住まいの在留邦人の方々は、普段から、各機関等が発信する火山に関する情報に関心を持ち、政府等からの避難指示が発せられた場合には、躊躇せずに安全な場所へ避難してください。 なお、万が一、活火山周辺地域において噴火に遭遇した場合には、 ・まずは、山頂火口から離れる方向へ避難する ・火砕流や泥流は、谷筋に沿って流れるため、谷筋や窪地には近づかない ・噴石から身を守るため、頑丈な建物や岩陰に身を隠し、頭を持っている物で守る 等の行動に心掛けてください。 |
(3) 豪雨災害・土砂災害 インドネシアでは、概ね10月から3月までの期間が「雨期」となり、各地で大雨による豪雨災害や土砂災害が発生します。 豪雨災害は、主に都市部における洪水や冠水、山間部では洪水、冠水に加えて土砂崩れや地滑りによる災害が発生し、人的被害、道路や橋の崩落等のインフラ被害を含む物的被害も多く発生しています。 「雨期」における豪雨災害・土砂災害から身を守るため、以下の行動を心掛けてください。 ・ 都市部において、車両乗車中に豪雨が発生した場合、運転手に店舗駐車場 等の安全な場所への避難・停車を促し、雨が落ち着くまで待機する。 ・ 車両乗車中に冠水箇所を発見した場合には、絶対に車両で通過することな く、冠水場所を迂回する等に心掛ける(車高が高い車両でも、エンジン内が 水没する可能性もあり、また、車体の半分でも水没した場合、水圧でドアの 開放が困難となる場合もあります)。 ・ 都市部における排水に関するインフラが十分でないため「マンホール蓋が 突然舞い上がり水柱の出現」「小さな水路や排水路でも落ち葉やゴミ等によ り詰まり、水があふれ出る」等の危険があることから、不要不急の外出は控 える。 ・ 山間部及び周辺を訪れる際には、天気予報等による雨の情報を事前に把握 し、延期・中止も視野に訪問の可否を検討する。 ・ 山間部を車両走行中には、運転手に土砂災害の可能性があることを十分に 伝え「道路脇斜面から水が流れていないか」「通行中の道路の水が茶色く濁 っていないか(斜面の土を含んだ水が流れていないか)」等に注意し、その ような状況を確認した場合には、安全な場所に待避する。 |
3.参考資料 (1) 緊急時備蓄品・持出品のチェックリスト 【緊急時備蓄品】 □ 非常用食料等 →家族が当分の間(1週間程度)飲食できる飲食料。 米、調味料、缶詰類(及び缶切り)、インスタント食品、粉ミルク等の保存食 及びミネラル・ウォーター(一人あたり1日3リットルが目安)等。 自宅から他の場所へ避難する際には、この中から缶詰類、インスタント食品、 粉ミルク、ミネラル・ウォーター、大型の水筒等を携行するようにしてくださ い。 □ 医薬品等 家族用常備薬の他、常用薬、外傷薬、消毒用石けん、衛生綿、包帯、絆創膏等 □ ラジオ(ラジオジャパン、BBC、VOA等の短波放送が受信できる電池仕様のも の及び予備電池) (参考)FM放送を受信できる携帯電話もありますので、ご自身が所持している 携帯電話にラジオ受信機能があるかどうかを確認しておくようお願い します。 □ 携帯電話用予備電池等通信機器に必要な機材 □ 衣類、着替え(長袖、長ズボンが望ましい。動きやすく、殊更人目を引くよう な華美なものではないもの。麻、綿等吸収性、耐暑性に富む素材が望まし い。) □ 履物(動きやすく靴底の厚い頑丈なもの) □ 洗面用具(タオル、歯磨きセット、石けん等) □ その他 懐中電灯、ライター、ろうそく、マッチ、ナイフ、缶切り、紙製の食器、割り 箸、固形燃料、簡単な炊事用具、防災頭巾(頭をカバーできるもの)、緊急連 絡先リスト(住所、電話番号)、市販されている居住地の地図等。 【緊急時持出品】 1 旅券(パスポート) □ 6ヶ月以上の残存有効期間があること □ 旅券の最終ページの「所持人記載欄」に必要事項を記入してあること 2 現金及び貴重品(貴金属、預金通帳、クレジットカード等) □ 家族全員が当分の間(2週間程度)、生活するのに必要なルピア貨(少額な額 面を含む) □ 外貨(米ドル、日本円等) |
(2) 情報収集関連リスト インドネシア国家防災庁(BNPB~Badan Nasional Penanggulangan Bencana) ● ウェブサイト https://dibi.bnpb.go.id/ 全国の災害情報を提供 ● アプリケーション inaRISK Personal 居住するエリアにおける災害リスク情報を提供 東ジャワ州地方防災庁 (BPBD Jatim~Badan Penanggulangan Bencana Daerah Jawa Timur) 東ジャワ州内における災害情報等を提供 ● SNS Facebook:https://www.facebook.com/bpbdjatim X(Twitter):https://twitter.com/bpbd_jatim Instagram:https://www.instagram.com/bpbd_jatim/ Youtube:https://www.youtube.com/@pusdalopsbpbdjatim 気象気候地球物理庁(BMKG~Badan Meteorologi, Klimatologi, dan Geofisika) ● アプリケーション ・ WRS-BMKG BMKGの警告受信システム(WRS~Warning Receiver System)を利用し た、全国の災害に関する早期警告を提供(火山噴火情報が除く) ・ Info BMKG 災害情報だけでなく、天気予報も提供する等、上記アプリケーションより、よ り多くの情報を提供 火山地質災害軽減センター(PVMBG~Pusat Vulkanologi dan Mitigasi Bencana Geologi) ● アプリケーション MAGMA Indonesia 火山噴火、地滑り、航空機用の火山灰情報を提供(早期警告通知有り) スアラ・スラバヤ(Suara Surabaya) ● アプリケーション 交通情報を始めとする情報を提供するラジオ局。現地運転手がよく車内で聴い ているラジオ局。 |